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神戸と真珠 |
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宝石の中で真珠って特殊だと思いませんか?ダイヤモンドやルビーのように華やかさはないけれど、とろみのある白さの中に淡く淡く光る色と深遠な輝きがあって、何よりも生き物のような暖かさを感じさせてくれます。![]() そしてあの丸み。ほぼ完璧に近い真円や、植物の種のような楕円形、海のしずくのような洋梨型、色々な形はあるけれども、柔らかいフォルムは人の手ではなく、貝の中で自然が作り上げていることが、真珠の魅力をより神秘的に感じさせてくれます。 約五千年前、ペルシャ湾や紅海で採された貝の中から、発見されたのが真珠の歴史の始まりと言われています。 クレオパトラが自らの富を見せ付けるために、アントニオの目の前で、自分の耳に飾っていた真珠を酢に溶かして飲み干したという有名なエピソードや、楊貴妃が美容のために真珠を粉末にして常用していたとか、真珠にまつわる話は世界史の中にも散りばめられています。 私も真珠は大好きです。結婚したときに母が贈ってくれた真珠のネックレスとピアスは宝物のひとつです。フォーマルな装いをした時に身に着けるアクセサリーとしてはもちろんなんですが、どちらかといえば眺めるほうが好きなんですね。 ![]() できる事なら…糸に通さないバラバラの真珠をたくさん小箱の中に入れて愛でていたい、そんな身分不相応な願いの元は「伊勢物語」の有名な歌です。 白玉か何ぞと人の問ひし時 つゆと答へて消えなましものを 平安の昔、ある男が深窓の姫君に想いを寄せていましたが、なかなか想いを遂げることができませんでした。 ある夜、とうとう姫を盗み出すのに成功して、芥川というところまで逃げてきたところ、野の草に夜露が月の光に照らされるのを見て「あの光っているものはなあに? 白玉なのかしら」と姫はつぶやきます。いつも邸の奥深くで過ごしているので、夜露などみたことがなかったのです。 男は先を急いでいたので返事もせず、やがてある小屋に姫を連れ込みます。ところがその小屋は鬼の住む場所で、男が少し目を離した隙に、姫は鬼に食べられてしまいます。 後に残された男は嘆き悲しみ、「あの時、夜露を白玉かとたずねた時に、あれははかない夜露なんだよと教えてあげて、一緒に露のように消えてしまえば、こんな悲しみを味わうこともなかったのに」多分、こんな意味でこの歌を詠んだんだと思います。 手前勝手というか、女々しいというか、あんまり共感は出来ない歌なんですけど、姫君が野原一面の夜露をみて「あれは白玉かしら」とつぶやく情景が目の裏に浮かんでうっとりとします。このときの白玉というのは真珠のことといわれていますが、夜露は知らなくても真珠は知っていたんですから、この頃にも真珠は身分高い人にはポピュラーだったんですね。 この時分は真珠をどのように愛でたんでしょう。平安の頃のお姫様は指輪やネックレスや腕輪を使ってなかったような印象ですから、一粒手にいれるごとにきれいな箱の中にそっとしまっていたんじゃないでしょうか。私の勝手な想像ですけど。あぁ、私も真似をしたいなあ。 ![]() ところで、神戸と真珠はとてもとても深いつながりがあるんですよ。日本の真珠は世界一の販売シェアを誇っており、そして神戸は、日本の真珠の加工・流通の80%を占めている「世界一の真珠の街」なんです。 明治26年に御木本幸吉さんが世界で初めて真珠の養殖に成功して以来、日本の各地で技術の向上を図り天然真珠に勝るとも劣らない真珠を大量に採取できるようになりました。その頃は日本国内の市場では高級過ぎたために需要が伸びず、アメリカやヨーロッパなどに輸出されていました。 このため、三重、四国、九州などの大きな養殖場から地理的に近い国際貿易港、神戸港に自然と真珠が集まるようになったのです。さらには真珠の選別にかかせない「自然光」が地形的に神戸には備わっていました。神戸の街の北側にそびえる六甲山が降り注ぐ光を反射させ、安定した北光線を六甲山の麓に供給しているため、神戸に真珠加工の会社が集まってきたのです。 急速な真珠輸出に伴い、粗悪品も出回ってきたところから、日本真珠の価値が落ちるのを恐れた御木本幸吉さんは、昭和8年、神戸の商工会議所の前に焼き釜を据えて、粗悪な真珠135キログラムを焼却したのです。「真珠の火葬」とマスコミでも大きく取り上げられ、日本の真珠の信用を内外から取り戻したそうです。 神戸に住んでいるからといって真珠がたくさん手に入るわけではないですけど、世界に誇る日本の真珠が神戸に集められ、素敵なジュエリーに変身して、世界の様々な場所に送られていくのを想像すると、私が何をしたわけでもないですが、神戸に住んでいるのが誇らしく思えます。 |
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