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神戸と伝説

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〜神戸と伝説〜

 私は子供のころから、昔話…いえ『伝説』が大好きでした。

 「昔々あるところにおじいさんとおばあさんが…」ではなく、「むかし、どこどこに住んでいた誰々が、今も残っているあの池でこんな不思議な体験をした」こんな具合に確かに存在していたらしい人が、今も存在する場所で、天女に会っただとか、お椀を貸してもらっただとかの不思議な体験をしたということが、その土地でずっと語り継がれている、それが逆に最高のファンタジーに私には感じられました。

 大人になって少し本を読んでみると、同じような伝説は各地に分布していて、昔話と大差ないことを知ったときは少しがっかりしましたけどね。

 そして子供のころに読んだ伝説は日本でも有名なものばかりだったので、神戸からは遠い東北や九州、関東のものがほとんどでした。

 田沢湖の「辰子姫」伝説とか、神々が舞い降りたという高千穂だとか、富士山を背負おうとしたダイダラ法師伝説とか・・・。

 でも、神戸をあらためて見回してみると結構あるんですよ。面白くワクワクするような伝説が!
それも結構な古い時代の有名人をお父さんに持っているような人とかの伝説が!
私のお気に入りの神戸の伝説をひとつご紹介します!


*栗花落の井(つゆのい)

 神戸市北区にある山田町は、のどかな田園風景が広がる町です。「太陽と緑の道」という遊歩道の通り道で多くの史跡が残っています。

 江戸時代の「攝津名所圖曾」という書物に豪壮な邸宅の描かれていた栗花落家跡が山田町原野にあり、今は、内にあった弁財天の祠と「栗花落の井」のみがひっそりと佇んでいます。この井戸は方形で水も枯れていますが、栗の花が終わるころには必ず清水が湧き出すという不思議な井戸です。



 毎年確かめようと思いつつも、その頃にはすっかり忘れています。歩いていけない距離ではないんですが…。

 奈良時代後半、淳仁天皇の御世、右大臣、藤原豊成の娘に中将姫、白滝姫という美しい姉妹がありました。中将姫は奈良当麻寺に伝わる曼荼羅を蓮華の糸で一晩で織り上げたという、能や歌舞伎で名高い姫です。その妹の白滝姫もも、才長けてうるわしく、多くの身分高い公達から求婚されていました。

 山田庄から郡司として朝廷に仕えていた山田左衛門尉真勝も白滝姫に恋をして、身分違いにも文を送り想いを伝えましたが、白滝姫の返事は(返事はくるだけでもすごいですね…)次のようなものでした。

 雲だにも 懸からぬ峰の 白滝を さのみな恋そ 山田男よ

 要するに「身分もわきまえず私に恋なんてしないでよ」ということですが、真勝も負けじと、次のような歌を返します。

 水無月の 稲葉の末の こがるるに 山田に落ちよ 白滝の水

 「稲穂の先が日に焼け付いている様に、私はあなたに恋焦がれています。どうか私と一緒に山田庄で暮らしてください…」とまあ、図々しいというか、あつかましい歌ですよね。ところが、お父さんの豊成はこの歌に感動して白滝姫を真勝の嫁にやってしまうのです。しかも帝までもがこの話に感動して、真勝に宝剣を与えて祝福します。



白滝姫としてはたまったもんじゃないだろうなあと思いません?
歌一首くらいで、身分の低い男に嫁がされて、それも都から遠いところに住まなければならないなんて、それもお父さんや帝が勝手に感動して話を進めてしまうなんて。
でも、身分低い男が貴人の姫と歌合戦をして、姫を娶るというモチーフは他の地方にもあるみたいです。

 で、果報者の真勝は白滝姫を山田庄へ連れて帰りますが、もともと気に染まぬ結婚生活を強いられた白滝姫は、子供を産んだ後、病気で死んでしまいます。
真勝は邸内に白滝姫を葬り、弁財天の祠と観音堂を建て姫を祀りました。
その弁才天祠の前に井戸を掘ると、毎年、栗の花が落ちる頃に清水が湧き出すので、真勝は白滝姫をしのび、自らのせいを「栗花落氏」と改め、その後、後世まで山田庄の豪族として栄えたということです。


来年の梅雨時こそは、水が出ているか見に行くつもりです。






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